なぜ臨床心理士にこだわるの?


みなさんがカウンセリングに行くことになったら、何を基準にして選びますか?
カウンセリングを受けるにあたって、カウンセラーが臨床心理士かどうかを基準にしてカウンセリングルームやクリニックを選ばれている傾向があるようです。
「心のケア=臨床心理士」「心理カウンセラーはレベルが低い」
日本ではこういう考え方をされている方が非常に多いです。

そもそも「臨床心理士でないとダメ」「心理カウンセラーは胡散臭い」と思われる根拠は何なのでしょう?

某知恵袋サイトにもこんな書き込みがありました。

「カウンセリングを受けることにしたのですが、AカウンセリングルームとBカウンセリングルーム、どちらがいいのでしょうか」

この質問に対する答えの書き込み。

「カウンセラーのプロフィールを見ると、どちらも臨床心理の専門職ではありません。心理学の基礎はなく、臨床心理学も学んでおらず、たくさんある心理療法のうちのほんの一部だけをつまみ食い的に勉強しただけのようです。」

質問者の方はこのアドバイスに納得されたようです。
ほかの回答者も書き込みされてましたが、やはり「臨床心理士じゃないから胡散臭い」「開業カウンセラーなら臨床心理士は必須」などという意見でした。
これらのやりとり。正しい部分もありますが誤解されている部分もあり、その誤解が広まっていること(というか誤解を広められていること)が残念でなりません。

「臨床心理士がいい」「心理カウンセラーは怪しい、胡散臭い」と考えている方の根拠はいったい何なんでしょう?

  1. 臨床心理士は公的な資格だから安心できる
    →心理カウンセラーは民間資格だから危ない、怪しい
  2. 臨床心理士は専門職だから安心できる
    →心理カウンセラーは専門職ではないから不安
  3. 臨床心理士は心理学をしっかり学んでいるから期待できる
    →心理カウンセラーはつまみ食い程度の知識だからレベルが低い

このような「印象」を根拠にしているのかなぁと私は感じています。
そう、これらはみなさんが臨床心理士や心理カウンセラーに感じている「印象」です。事実ではないことも含まれています。その辺の誤解を解くことができればなぁと思ってます。

なお最初に明記しますが、この記事は決して臨床心理士を攻撃・敵対視するものでもなければ、臨床心理士を否定するものでもありません。ただ心理系の資格として臨床心理士が必要以上に崇められている誤解を解くこと、そして心理カウンセラーだって十分使える職人だということをわかっていただくのが目的ということをご理解ください。


まずAについて。
臨床心理士は公的資格だから安心できる。そう思われている方へ。

いきなりですがこれは誤解です。
臨床心理士は公的資格ではありません。日本臨床心理士資格認定協会による「認定資格」です。(といっても国や行政レベル、国際組織における資格要件に認められている高度で素晴らしい資格です)
最近まで心理系の公的資格はなく、全国規模かつ信頼できる「実務的な心理系資格」として臨床心理士がありました。そういう面で「こころのケア=臨床心理士」という構図が長年続いてきました。

しかし今後は状況が変わります。来年には心理カウンセラーの国家資格として”公認心理師”という資格ができます。資格内容は今の臨床心理士に類似してます(臨床心理士資格は公認心理師とは別に今後も存続する模様です)。
またカウンセラー類似の資格で、昨年は新たに国家資格キャリアコンサルタントができました。また従来からも精神保健福祉士などといった国家資格もあります。これらも特定の専門分野ではありますが、カウンセリング実務を含む国家資格です。

カウンセリングにおいては臨床心理士資格はなくとも、民間のカウンセラー資格に加えて上記のような”カウンセリング実務を含む国家資格”を持っていれば信頼に値すると思われます。例えば職業生活における問題でメンタル不調に陥ったなら臨床心理士よりもむしろキャリアコンサルタントのほうが相談相手として適任です。

このように心理系の国家資格、またカウンセリング系の国家資格は近年増えています。今はもう臨床心理士資格にこだわる時代ではないのです。
(※もちろん臨床心理士さんにカウンセリングをお願いしてもいいんですよ。あくまでも”こだわる必要がない”というお話です。)


では次にBに話題を移しましょう。
臨床心理士は専門職だから安心できる、心理カウンセラーは専門職ではないから不安。そう思われている方へ。

うーん、そもそも「専門職」って何なのでしょう?
これ、ウィキペディアとか大辞林とか各百科事典でも定義がまちまちなんですよね。
例えば職業カウンセリングの定義だと「管理職や一般職に対する言葉で専門的な業務につく人」、大辞林では「高度な専門知識や技能が求められる特定の職種」とあるので、こうなると心理カウンセラーも専門職なんですよね。

臨床心理士が専門職と思われて、心理カウンセラーが専門職と思われない基準は何なんでしょう?
実はそんな基準などなく、イメージ(印象)ではないでしょうか。特にAとCの誤解からくるイメージなのかもしれません。


ということでCについて見ていきましょう。
臨床心理士は心理学をしっかり学んでいるから期待できる。心理カウンセラーはつまみ食い程度の知識だからレベルが低い。そう思われている方へ。

「臨床心理士は心理学をしっかり学んでいる。」これはその通りです。
そして心理カウンセラーは「たくさんある心理療法のうちのほんの一部だけをつまみ食い的に勉強しただけ」というところ。これもその通りです。民間心理カウンセラーは確かにたくさんある心理療法すべてを勉強したわけではありません。

でも「それでいいのです!」。
そもそも臨床心理士と心理カウンセラーでは置かれている立ち位置が違います。

臨床心理士は「臨床心理学」にもとづく知識や技術を用いて人間のこころの問題にアプローチする“心の専門家”です。もちろん心理学について幅広い知識を学んでいるので、カウンセリングの知識も技法も身につけています。

一方民間の心理カウンセラー養成スクールで学んだ民間資格の心理カウンセラーは、指摘の通り心理学の知識については部分的です。しかし数ある心理学の中の「カウンセリング心理学」という分野に特化して学んでいます。
カウンセリング心理学とは心理カウンセリングに必要な範囲に限定して学ぶ心理学知識・技術です。つまり大義の心理学としては部分的な知識ではありますが、心理カウンセリングに必要な心理学分野はきちんと学んでいます。
ですから「心理カウンセリングというひとつの療法に限れば」決して民間心理カウンセラーが知識的に劣っているわけではないのです。

そもそも心理カウンセリングは精神病治療においてどのような位置づけなのでしょうか。
心理カウンセリングは、精神病治療における心理療法の中の「ひとつの療法」です。
カウンセリングルーム(オフィス)はその「ひとつの療法」に特化して運営している施設であり、心理カウンセラーはその「ひとつの療法に特化した知識・技術」を身につけた人なのです。

ということで、心理カウンセラーは「たくさんある心理療法のうちのほんの一部だけをつまみ食い的に勉強しただけ」というのは正しいです。ただしその「ほんの一部」に、カウンセリングに必要な分野が網羅されています。
だから「それでいいのです!」
確かに心理学全体の知識は不足していますが、カウンセリングを行うための知識はきちんと学習しているのです。そこを誤解しないでほしいのです。


どうでしょう。
決して臨床心理士はダメだとか、心理カウンセラーが優れていると言いたいのではありません。ただ、気分障害で心理カウンセリングを受ける場合には別に臨床心理士資格の有無にこだわる必要はなく、民間の心理カウンセラーも十分使えることをわかってもらいたい。だから臨床心理士に”こだわる”ことなくカウンセラー選びをしてほしいということを書かせていただきました。

ただここまで書いておきながら、民間の心理カウンセラーには危険性があることにも触れておかなければなりません。
それは技術がピンキリなところ、そしてレベルが低いカウンセラーも活動できてしまうところです。そこで民間の心理カウンセラーを選ぶにあたっては技術レベルを見極めなければなりません。

実は・・・ここがBにあたるイメージなんでしょうね。レベルの低い心理カウンセラーも多いことが「専門職ではない」というイメージなのかもしれません。だから臨床心理士資格を持っている人は安心、民間の心理カウンセラーは不安、危険だ・・・そりゃそうだと思います。

民間カウンセラー資格「だけ」の心理カウンセラーはやっぱりお勧めできません。そもそも民間資格は資格発行団体の信頼性が決して高いとは言えません。その団体「だけ」でしか学んでないカウンセラーは知識・技術が偏っている(その団体の考え方に一極化している、他の視点を知らない)ケースが見受けられます。

でも先ほどの通り、心理系・カウンセリング系の資格は臨床心理士以外にもいくつかあります。民間カウンセラー資格に加えて公的資格か準公的資格(産業カウンセラーなど公的ではないけど全国的に知名度のある資格)を持っていたり、企業内や相談機関でカウンセラー経験が豊富など、プラスαがある民間カウンセラーならば臨床心理士でなくてもお勧めできます。

それに加えて「スーパービジョンを受けているか」まで確認できればより信頼できるカウンセラーです。スーパービジョンとは心理カウンセラーの継続教育・技術指導のようなものです。
いいカウンセラーは一人前になってもきちんと定期的に指導者の下で技術の見直し・自己研鑽を行っています。スーパービジョンを受けてないカウンセラーは自己流に走り技術レベルが低下している恐れがあります。

民間の心理カウンセラーを選ぶ際は

  • 民間のカウンセラー資格のほかに公的・準公的資格も持っている
  • 複数団体の資格を持っている、または複数団体で学んでいる
  • スーパービジョンを受けている

という点をチェックしていただければ、民間資格のカウンセラーでも安心・信頼できるカウンセラーに巡り合えることと思います。


それと・・・これはちょっと変わった視点ではありますが、民間の心理カウンセラーって、(私もですが)中高年も結構多いと思いませんか?
実は中高年になってからは臨床心理士資格を取りたくても取りにくいのです。なぜなら臨床心理士や今後できる公認心理師は、受験資格が”大学の心理系学部・大学院を卒業していること”となってます。このように条件が厳しいので中高年の人は民間のカウンセラー資格を取って活動しているケースが見受けられます。

これは逆に言うと、中高年の民間カウンセラーには社会人経験がある人が多いのです。
これが中高年の民間カウンセラーの強みです。一度企業に就職し、仕事を通じていろんな社会問題・複雑な人間関係を経験した上で、その中でメンタルケアの必要性を感じカウンセラーを目指して脱サラしてます(私もか・笑)。

一方で臨床心理士さんは心理系の大学・大学院を出て臨床心理士資格を取り、そのまま病院やクリニックに就職するケースが多いと思われます(←ここは私の憶測です)。この憶測が当たっているならば、臨床心理士さんは一般企業の雰囲気など社会人経験があまりないまま相談業務に就いてることになります。

これは私のところに来ていた、社会人のクライアントさんのお話です。
仕事での悩みを話したのですが、臨床心理士さんにはイマイチわかってもらえてないなと感じたそうです。その点私みたいな中高年の心理カウンセラーに話すと会社組織や人間関係にも理解があり安心して話せたと言われたことがありました。ここは社会の荒波にもまれた経験を活かせる”脱サラ民間カウンセラー”の長所かなと思います。


最後に・・・カウンセラー選びでいちばん重要なのは実は「相性」です。臨床心理士資格の有無とか有名なカウンセラーかなどではなく、カウンセラーとクライアントさんが信頼関係を築けるかどうかがいちばん重要なのです。あなたと相性の合うカウンセラーと巡り合うことが、最短かつ最良の治療につながります。

これらを踏まえて。
臨床心理士は信頼性の高い心理系資格のひとつであることは確かです。
でも今後は他にも心理系・カウンセリング系国家資格が増えるので、それらも視野に入れた上で「適切な」カウンセラーを選びをしてほしいと思います。
このような側面からも、カウンセリングを受ける際に臨床心理士資格に”こだわる”のはあまり意味がないことが少しでも伝われば幸いです。
(※くれぐれも「こだわること」に意味がないということです)

臨床心理士にしろ民間資格のカウンセラーにしろ、ぜひ「相性のいいカウンセラー」に出会ってほしいなと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です