時代の流れは職場で健康管理

労働と健康は切っても切り離せない関係です。具合が悪い状態で仕事をしてもいいパフォーマンスは発揮できませんよね。
にもかかわらず近年までは企業は労働者に定期健康診断を受けさせる程度。労働環境はどんどん厳しくしても労働者の健康管理は企業ではノータッチ(個人に責任を負わせる)という企業慣習が染みついていました。

本当の焦点は勤務中の対策

近年その慣習に変化が見え始めています。
勤怠管理の面からは過労死の防止を目的に労働時間を適正化する傾向が見られます。有給休暇を強制的に消化させる制度も浸透しつつあります。これらは「労働時間外の個人時間を増やすこと」による対策。個人の時間を増やすだけで健康管理は勤務外に自主性に任せる形(相変わらず企業はノータッチ)の対策です。
私がサラリーマンをしていた10~20年前は有給なんか取れない、勤務時間終了後にタイムカードを押してから残業するのが当たり前でしたから、これでも以前に比べればありがたい方針です。

でも最近はさらに進んで「勤務時間中に企業主体で健康管理を行う」形の対策を行っている企業も現れています。
昼休みに全員でヨガを行う。数時間ごとに瞑想の時間を設定する。立ってでも仕事ができる環境を整える。横になって休めるなど休憩スペースを充実する。6時間以上睡眠をとれているかをアプリを使って会社が管理する。栄養バランスを考えた社員食堂にする。
「労働者が健康的に仕事ができる環境を整えるのも企業の責務」と考える経営者が出始めています。

健康に投資した方が効果がある

ちょっと理論的なお話になりますが、労働者の健康に気配りのある企業が増えている背景には、そうすることが結果的に企業の利益にもつながることを理解している経営者が増えていることが挙げられます。
その仕組みを、Aさんという社員が体調を崩した場合でご案内します。

Aさんが病欠する → そのままではAさんの仕事が進まずAさんの分の売り上げが発生しない → Aさんの仕事がほかの社員に振り分けられる → ほかの社員の負担が増える → ほかの社員も能力が落ち売り上げが落ちる → 会社全体の利益が低下 → Aさんには欠勤中も給与・手当が発生する(余計な経費) → 結局Aさんが退職するとなると新たな求人・採用活動経費がかかる → 根本的な解決をしていないのでAさんのような社員がさらに発生するかもしれない、そのたびに上記のリスクが繰り返し発生する ⇒企業として収益が上がらない

こんなスパイラルに陥るのです。
中でもこの場合の「Aさんの休業手当」と「新たな求人・採用活動経費」は会社から見れば本当に無駄な経費です。それがAさんひとりだけならまだしも、他にも同じような社員が次々と出てきたらこれらの経費は2倍・3倍に膨れ上がりますよね。

そんな無駄な経費を発生させるのだったらその分を社員の健康管理に投資して、元気な状態の社員にバリバリ働いてもらって収益を上げる方が会社のためになる。そういう考えが浸透してきています。その結果、上記のように勤務時間中の健康管理、帰宅後の睡眠チェックなどにも力を注ぐ「人を大切にする企業」が増えつつあります。

こころの不調ならさらに深刻

上記でご案内した「会社にとって無駄な経費」。これがメンタル不調に陥った社員を出してしまった場合はもっと深刻です。
体の不調なら一日寝ていれば治る、少し休めば治る、病院へ行けば治るなど1日~数日程度の不在で済む場合がほとんどです。しかしメンタル不調はそうはいきません。うつに陥れば数か月や数年の休養や、退職や自殺といったケースも懸念されます。
それだけに企業にとってメンタル不調への対策は実は非常に重要なのです。できるだけメンタル不調者を出さない対策と、出てきた際に迅速に対応できる体制を整える必要があります。

職場でのメンタル不調はストレスと環境不適応によるものがあります。
ストレスに関してはここまでご案内したような勤務中にヨガや瞑想の時間を取り入れること、またしっかり睡眠を確保することで解消が期待されます。ということでこれらはメンタル不調者を出さない予防策としてもとても有効な対策と思われます。

一方、環境不適応によるメンタル不調は職場の人間関係、自己の存在感や貢献感の低さなどに起因するものです。予防策としては「けちなのみや(ケチな飲み屋)」に気づくことが挙げられます。
「けちなのみや」とは

  1. 欠勤
  2. 遅刻・早退
  3. 泣き言をいう
  4. 能力低下
  5. ミスが増える
  6. 辞めたいと言い出す

の頭文字で表した6つのサイン。これらがメンタル不調に陥っているサインです。部下にこのような傾向が見られたら上司や会社は早く気づいてケアすることで、深刻なメンタル不調に陥ることを予防できます。
健康管理に投資している企業では管理職向けにこういった知識と対策の研修を行っています。

また大企業ならほとんどの企業で企業内カウンセラーを置いています。自発的に相談できる環境も整え、予防としてはもちろん陥ってしまった場合の対策にも活用されています。

でも、そうでない会社がほとんど

このように時代の流れとしては企業が社員の健康管理に配慮する方向になりましたが、残念ながら実行している企業はまだ大企業やグローバル企業を中心としたほんのひと握り。ほとんどの企業ではせいぜい残業の抑制、有給休暇取得の推進程度なのが現状です。
ただ労働基準法の改正や監督官庁の監視強化により、少なくとも残業の抑制は多くの企業で行われている傾向にあります。それで得られた「自分の時間」をいかに休息やストレスの解消に充てるかが、現在の職場で健康的に働くための課題になります。

先ほど「大企業には企業カウンセラーを置いている」とご案内しましたが、当相談室のキャリアコンサルティングはみなさまの企業カウンセラーとしてご利用いただけます。お仕事上の悩み相談、職場の人間関係の相談、ストレスチェック、アートセラピーによるヒーリングなどを行っています。
自分の時間をセルフケアに充てる際に、当相談室の利用も選択肢に入れていただけるとありがたいです。

このことは次回改めてくわしくご案内させていただきます。
では今日はこの辺で。

 

コメント