タテジマのハンカチを横縞に


羽生結弦選手の金メダル。冬季オリンピックに興味がない私でもつい見入ってしまうほど感動しました。
右足首のケガを抱えていたことはみなさんもご存知ですよね。金メダル獲得後のインタビューで羽生選手は「やりきれたと思えるぐらいの演技ができたのがよかったと思います。とにかく右足が頑張ってくれた」「右足を触っていたのは、感謝です。感謝の気持ちだけです」と語っていました。

頑張ってくれた右足に感謝。
私も腰痛を抱えながらリハビリ目的でウォーキングをしていて、無事に帰ってきたときに「帰るまでがんばってくれたね、ありがとう」と腰に語り掛けています。なので羽生選手がインタビューで話されたことがとてもよくわかります。

さて、これを踏まえてここからブログの本題になりますが・・・
みなさんは「褒めること」と「感謝すること」の違いがわかりますか。「よくできました、えらい」と「ありがとう」の違いを。

褒めるという行為は「上に立つ人が、下の者を評価すること」。そこには必然的に上下関係が生まれます。
一方、感謝することには上下関係が存在しません。仮に上下関係で例えるなら、下の者が上に立つ人に感謝してもいいのですし、上に立つ人が下の者に感謝してもいいのです。
褒める場合では下の者が上に立つ人を褒めるなんて普通はできませんよね?部長がヒラ社員を褒めることはあっても、ヒラ社員が部長に向かって「よくできましたね、偉いな」などと言えないでしょう。でも「部長、助かりました。ありがとうございます」とは言えますよね。

また褒めるという行為には裏に承認欲求が隠れています。褒める側の人は下の者から「目上の人」と認めてもらいたい欲求、褒められる側の人は目上の人に自分の存在を認めてもらいたい欲求です。ともに上下関係に囚われているからこそ「認められたい」という欲求が生まれます。
一方、感謝は一方通行。自分が相手に感謝の気持ちを伝えられればそれでいい。相手の承認など求めてないので相手の反応は関係ないのです。

アドラー心理学では「人間の悩みはすべて人間関係の悩みである」と言い切っています。人間関係をシンプルにすれば幸せになれる。しかし自分で人間関係を複雑にしているがゆえに悩みができる、と。
その、人間関係を複雑にする要因のひとつが、人間関係を縦の軸でとらえてしまうこと。つまり上下関係に囚われてしまうことです。

上下関係とはすなわち競争の関係です。相手よりも上に立とう、上に立ちたいという思いから競争を仕掛ける関係です。競争に勝てば上に立つことができ、負ければ下に甘んずる。下になれば上の者に認めてもらうようなアピールをする(つまり承認欲求)。ここで用いられる手段のひとつが「褒める・褒められるの関係」です。
そして上の人は上の身分なりに、下の者は下の身分なりに「こいつには負けたくない」と更なる競争を生む。つまりあなたの周りの人はみんな敵ばかりに見えてしまいます。そんな環境で人間関係を考えなければなりません。
うーむ、これでは人間関係が複雑化してますね。

一方でアドラーは「人間関係を横の軸でとらえればいたってシンプルになる」とも言っています。
では人間関係を縦の軸でとらえるのをやめて、横の軸で見ることができるようになるとどうでしょう?

横の軸で見ることができるようになると上下関係にとらわれないので「相手との競争」という意識を持つ必要がなくなります。すると周りの人は敵ではなくなります。敵ではないということは・・・仲間になります。
競争しなくていい。上に立とうとか下になりたくないなどと考えなくていい。そんな仲間の中で「ただ、自分の人生を生きていけばいい」のです。同じ平面の大地を、みんながそれぞれ前に向いて歩いている。ただそれだけ。そう考えると人間関係が至ってシンプルに見えることでしょう。これが「横の関係」という捉え方です。

それぞれがただ自分の人生を生きていけばいい。とは言っても世の中ひとりで生きていけるものではありませんよね。そんな中で生まれるのが共同体感覚。つまり協力や助け合いです。周りはみんな仲間なのですから。

ではみなさんが何か困っていて親切な人に助けられたとき、どうしますか?例えば落とした財布を拾って届けてくれた人に対して「偉いね!」などと言いますか?
ここは「ありがとうございます」とか「あなたのおかげで助かりました」ですよね。

“ちょと待て!子供が届けてくれたら「偉いね!」って褒めてあげるでしょ!”
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。それこそがあなたが縦の関係に囚われている証です。”相手が子供だから”という上下関係に囚われ、大人という上から目線で褒めているのですから。

“いやいや、褒めたら子供は喜ぶでしょ!”
確かに喜ぶかもしれませんが、それでは今後その子は褒められることを目的に善意をするような育ち方になりかねません。裏を返すと褒められないなら善意をしなくなるのです。大人になるにつれて褒められる機会は減ってくるでしょう。そうなったときに対応できない大人になりかねないのです。

一方、同じ子供が「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えられたらどうでしょう?
きっと「役に立てた」という嬉しさを感じることでしょう。それが「貢献感」というものです。
貢献感は相手が目上だろうと後輩だろうと関係ありません。「人の役に立てた」という喜びから来るものなのですから。極端な話、相手から言葉で伝えられなくとも「自分が誰かの役に立てた」と実感するだけでも貢献感を持つことができます。
人を助ける機会というのは人生で何度もやってきます。貢献感を実感した子供は、きっと誰から褒められなくともこれからも自発的に助け合うことをしていくことでしょう。

そうして貢献を繰り返していくと、きっと仲間からありがたい存在に見られることになるでしょう。
そこに「所属感」が生まれるのです。この仲間の中にいていいんだ、ここに居場所があるんだ、と。承認欲求とは違う、仲間から自発的に認められる存在感です。

アドラー心理学のゴール(人はどうしたら幸せになれるか、のゴール)は共同体感覚である、とされています。その共同体感覚を構成するのが「貢献感」と「所属感」を満たすことなのです。
貢献感・所属感を満たすためには周りを仲間と見る「横の軸の人間関係」の中で生きていくことが必要。周りを敵視する競争社会=縦の軸の人間関係からはこれらを得ることができません。

そして横の人間関係の築き方は決して難しくありません。褒めることをやめて感謝することを意識すること。褒められることを期待するのではなく人の役に立つ嬉しさを感じることです。
感謝するとは・・・「ありがとう」のほかにも「あなたが〇〇で私は嬉しいよ」など自分の気持ちをそのまま伝えることも相手の貢献感につながりますよ。

えっと、今日のタイトルは「縦の関係」と「横の関係」というテーマから直感的に付けたものですが、元のネタ(マギー司郎)をみなさんがご存じかどうか不安です(苦笑)

 

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