子どもの頃の決断、見直しませんか *脚本分析と禁止令

以前私は、ちょっと変わった目標を立てたことがあります。
それは「人に頼る生き方を目指す」というもの。

「人に頼るのが目標?そんなの目標になるの?」
そう思われるかもしれません。でも実はこれ、当時の私にとっては難しい目標だったのです。

私は「人に頼らず、なんでも自分でできる人」を目指していました。それこそが社会に役立つ人間だという信念があったからです。
でもそんな人を目指しているうちに「困ったときでもほかの人に頼ることができない、周りの人に頼るのが下手、または頼ろうとしない」という性格になっていることに気づきました。

この性格が形成される背景にあるのが「人生脚本」というものです。
子どものころに親や先生・指導者から受けてきた言葉や態度によって「私ってそういう存在なのか」と感じ取り、「だったらこんな生き方をしていこう!」と決心し、その決心に基づいた人生の脚本を思い描くことです。

…と書いてもわかりにくいですよね。簡単な例をひとつ挙げます。

人生脚本の原点は幼時決断

小さな男の子の前で、お母さんがついポロリと「本当は女の子が欲しかったのよね~」と言ったとします。
お母さんとしては別に深い意味があって言ったのではないのですが、男の子はそれを聞いて罪悪感を抱いてしまいます。「女の子が欲しかったお母さんを、僕はがっかりさせてしまってる」と。

子どもは親なしでは生きていけません。見捨てられたくないからお母さんに気に入られる行動を考えます。その結果「これからは男の子らしさを捨てて女の子のような振る舞いをして生きていこう!」という決心をします。強さよりもやさしさをアピールしたり、外で遊ぶよりもお菓子作りをしたり。

この一連の流れを「人生脚本」といい、この時の決心を「幼時決断」といいます。「幼児」ではなく「幼時」、幼い時の決断です。

大人になった今の苦しさは、実は今でも幼時決断に囚われているせいではないか。この幼時決断に基づく人生脚本は、大人になった今では通用しない、間違っているから今苦しんでいるのではないか。
だったらその幼時決断に気づき、考え直し、新たな人生脚本に書き換える。これが「脚本分析」という療法です。

幼時決断のきっかけは禁止令

人生脚本の構成要素に「禁止令」というものがあります。
禁止令とは、周囲の大人や社会環境が子供に対して「あなたは◌◌するな」「あなたは◌◌してはいけない」「あなたには◌◌する価値がない」というメッセージを伝えてしまうことです。これらのメッセージは主に非言語(振る舞いなど)か、言葉の裏に隠れているメッセージから読み取られるものです。
禁止令は幼時決断に影響を与えます。

この例の場合はお母さんが言ってしまった「女の子が欲しかったのよね~」という言葉が禁止令、さらに細かい分類では禁止令の中の「性別の禁止」というものにあたります。
お母さんのこの「男の子であることを否定(禁止)」してしまう発言が、この子が女の子っぽく振舞うという幼時決断したきっかけとなってしまったのです。

大人になって現れる禁止令の生きづらさ

禁止令は全部で12種類あります。
この例では「性別の禁止」をご紹介しましたが、私の場合は「子どもであることの禁止」という禁止令が強く働いていたと思われます。
「子どもであることの禁止」とは、子供なのに家族全員の食事の準備をすべて任されるなど、子どものころから(お手伝いでなく)責任を負わせる家庭などで育った人に見られる禁止令です。

私の場合は、実は家庭ではこういうことはほとんど思い当たる部分がありません。そう考えると学校生活で形成されたものと思われます。
小学校低学年の頃からクラス委員など重要な係をやらされたことが多く、中学や高校では運動部の部長も。クラスや部のまとめ役の責任を負わされ、常に模範となる行動を求められ、また大人である先生とのパイプ役や、大人の会合の中に参加させられることがよくありました。

これらのことはもちろん人間的成長につながることもあるのですが、私の場合はプレッシャーに感じてしまいました。プレッシャーから「自分が何とかしなきゃいけない(頼っちゃいけない)」「誰にも頼れない」といった「子どもであることの禁止」の禁止令が形成されたと考えられます。

そしてこの「子どもであることの禁止」の禁止令に囚われるとどういう影響があるか。
子どもながらに大人の世界の中に置かれ、責任を負わされることで、大人になって他人に甘えられない、頼れないといった性格になってしまう傾向があります。
もちろん人に頼らない大人というのも立派ですが、社会ではひとりではどうにもならないこと、誰かに頼ることで乗り越えられることもたくさんあります。そんな時でも人に頼ることができず、すべて自分で抱え込んでしまうから課題が解決しない、先に進まないという苦しさに陥ってしまいます。

私は正に、この脚本に縛られていたと思われます。
だから”人に頼る”ということは目標に掲げるに値するものだったのです。

脚本分析でこれからの人生脚本を書き換える

脚本分析は文字通り、人生脚本を分析する療法です。
みなさんが今抱えている生きづらさはどんなものか。その生きづらさに影響しているエピソードがないか。そのエピソードには禁止令が影響していないか。その禁止令による幼時決断をしていないか。その幼時決断は正しいものか、今のあなたにも合ったものなのか。

もしその幼時決断がまちがったもの、合わないものであれば、その幼時決断の囚われから逃れましょう。そしてその時に描いた人生脚本を、今のあなたに合った新たな人生脚本に書き換えましょう。そうしてみなさまが今抱えている生きづらさから解放されることが期待できます。

脚本分析は当相談室でもカウンセリングで使っている技法のひとつです。この記事を読んで、興味を感じたならぜひいらしてください。